背縫いの力、縫い眼の力

八掛の背縫いの縫い目

古い言い伝えですが、背縫いの縫い目には着物を着ている人を守る力があると聞いたことがあります。

昔々、背中の首の下(ちょうど背紋を入れる位置あたり)に身体と外界の出入り口?があると考えられていたそうです。
うっかりするとそこから魂が抜け出てしまったり、悪い気(病気など)が中に入り込んでしまうことがあると。

大切な人、着物を着る人を守りたい。
そんな気持ちで着物を縫った昔の人たちは、着物の背縫いの縫い目が背中の「眼」として、悪い気が体に入ってこないようにジロリと睨みをきかせてくれると考えるようになったようです。
(赤ちゃんの着物である一つ身には背縫いが無いので、その代わりに背守りをつけます)

迷信深くない私も昔の人たちの祈りに思いをはせて、背縫いを縫う時は気持ちを整えて縫うように心がけています。(あまり心を込めたら迷惑かもしれないので、サラッと縫います、、)

着物の仕立て屋が広幅の洋服生地から着物を作る時も背縫いを付けたがるのは、背縫いがある方が着付けがしやすいということだけでなく、こんな理由もあるのでした。