いつも使っている道具、あるのが当たり前ではないなとしみじみ感じています。
と言いますのは、先日、愛用しているタキイ製のアイロンが突然熱くならなくなってしままったのです。確認したところ電源コードの中が断線していました。自分で直そうとしたのですが無理な状態でした。
予備のコードも無いし困っていたところ、いつも和裁道具の購入でお世話になっている京都のいとや増田泰商店様で修理をしていただけることに。
先日修理品が届きました!
修理していただけるお店がまだあることに感謝の気持ちでいっぱいです。
本当にどうもありがとうございました。
大切に使っていこうと思います。
カテゴリーアーカイブ: 和裁道具と材料
手縫い糸とミシン糸の違い
右の青の糸巻きがミシン糸
手縫いで和裁をする場合は手縫い糸を使います。
ミシンで縫う時はミシン糸を使います。
手縫い糸とミシン糸の違いは、糸の撚り(より)の方向です。
手縫い糸はS撚り(=右撚り)、ミシン糸はZ撚り(=左撚り)。
手縫糸をミシンで使うと切れやすくなり、ミシン糸を手縫いで使うと糸がよじれやすくなってしまいます。
詳しくは以下のフジックスのページが分かりやすかったです。
【フジックス探偵団 ちょっと知りたい糸のこと】
https://www.fjx.co.jp/learn/t_detail03.html
鯨尺(くじらじゃく)
「鯨尺」(くじらじゃく)とは、和裁用のものさしのことです。
現代でも多くのプロの仕立て屋は着物を鯨尺で仕立てています。
お客様の寸法をcmで測ったとしても、わざわざ鯨尺に変換して仕立てているのです。(※鯨尺ではなく曲尺で仕立てている地方もあります)
鯨尺の1分は約0.38cmで目盛り幅が大きいため印が付けやすく、着物の仕立てを合理的に進めることができます。鯨尺の1尺は約38cmで、反物の幅くらいと想像していただければよいでしょうか。
和裁を始めた頃は鯨尺が使いこなせるか不安だったものですが、今となってはメートル法の方がピンとこなくなってしまいました。和裁技能士同士だと「髪の毛5分くらい切りたい」とか普通の会話です。。何事も慣れですね!
鯨尺の物差しは昭和34年(1959年)のメートル法の改正により一時その生産と販売が中止されました。しかし、多くの方の努力により和裁における鯨尺の必要性が再確認され、昭和53年(1978年)より法的規制が解かれて再び生産と販売が再開されました。
19年間もの長期間、鯨尺の生産販売が合法的にできなかったなんて、大変なことだったと想像します。古いものさしを大切に使っていらしたことでしょう。
和裁における鯨尺の必要性が全国的に再確認された経緯においては、永六輔さんや小沢昭一さんら著名人によるメートル法と尺貫法の併用運動の力も大きかったことと思います。
永六輔さん著の『クジラとカネ売りますー計量法現行犯は訴える!!』(1977年)には、
「曲尺で建てた家に鯨尺で縫った着物でくつろぎ、一升びんで一杯やったりするのが、日本の文化でないのか」
という一文があり、本当にそうだと合点しました。ものさし、尺度、道具というものは文化の一部なのです。
現代の和裁技能士として当時様々な活動をしてくださった諸先輩方に感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございました。
右:当時のお芝居のチラシ「純情二重奏」(大笑い計量法伝伝)
そんな大切な鯨尺ですが、現在は和裁をする人も少なくなっていて需要が圧倒的に減っています。このままだと生産してくださる方がいなくなってしまうかもしれません。
鯨尺は着物の寸法を測るのに無くてはならない道具です。着物をたたむ時にも便利に使えます。
お着物好きな方はぜひご家庭に1本備えて応援していただけると嬉しいです。