子供物長着の種類、裁ち方

子供物長着(生まれてから12〜13才くらいまでの子供の着物)の裁ち方は、大人物とは異なります。

子供物長着の裁ち方は一般的に、「一つ身」「二つ身」「三つ身」「四つ身」「別衽裁ち(=「五つ身」)の5種類に分けられます。
(※ちなみに「六つ身」は「本裁ち(ほんだち)」=大人物長着の裁ち方と同じです。)

現在は「一つ身」「四つ身」「別衽裁ち」の3種類の仕立てが多いです。

子供の成長は早いので、特に普段着は大きめに仕立てて3年くらい着ることを目指します(肩揚げ腰揚げをします)。楽に安全に着られる様に心がけることも大切です。

また、子供の着物は大人の着物以上に、地域の風土や習慣よる違いが多く残っています。お祝い事など儀式の衣裳は、地域の風習なども良く考慮して仕立てることが求められます。

以下、それぞれの裁断図の例と特徴です。


※本裁ち(六つ身)は大人物長着と同じ裁ち方です

一つ身(ひとつみ)

・生まれてから2才くらいまで(いわゆる歩き始める頃)までの着物。
・背縫いがない。
・「産着」(=手通し)や「宮参り初着(みやまいりうぶぎ)」(=宮参り掛着)は一つ身裁ちが一般的。
・身頃が一枚布であることから「一つ身」と言う(※諸説あり)。

二つ身(ふたつみ)

・一つ身と同じ要尺で背縫いがある。
・両面物(裏表のない反物)でないと作れない。
・身幅が狭くなり実用性にかけるので現在ではほとんど作られない。
・一つ身に対し、身頃を二つに分けてあることから「二つ身」と言う(※諸説あり)。

三つ身(みつみ)

・主に満2歳くらいの子供の着物。
・身幅の割り振りのバランスが良く格好が良いのが特徴。
・両面物と片面物(裏表のある反物)とで裁ち方が違う。
・裁ち方が複雑で、着用期間が短く経済的でないので現在あまり作られない。
・反物要尺から袖を取った残りを3等分するから「三つ身」と言う(※諸説あり)。

四つ身(よつみ)

・3〜6、7才ぐらいまでの子供の着物。
・子供物の中では最も良く用いられ、七五三はこの裁ち方が多い(※7才は別衽裁ちや本裁ちにすることもあります)。
・前身頃をつまんで衽にする(つまみ衽)。
・反物要尺から袖を取った残りを4等分するから「四つ身」と言う(※諸説あり)。

別衽裁ち(べつおくみだち)=五つ身(いつつみ)

・7才〜12、3才ぐらいまでの子供の着物。
・「別衽付き四つ身」「大四つ身裁ち」「車裁ち」とも言う。
・十三参りの着物は、この別衽裁ちか本裁ちにすることが多い。
・反物要尺から袖を取った残りを5等分するから「五つ身」と言う(※諸説あり)。

躾糸(しつけいと)について

袖のしつけ。ぞべ糸(白絹の細い糸)。着る前に取ります。

着物を新しくお誂えすると、袖、共衿、うち揚げ、褄下、裾などに躾糸(しつけいと)がかけられていることがあると思います。
躾をかける目的は、仕立ての便宜(形を整える)のため、狂いを防ぐため、美しく見せるため、です。

現在、躾糸は着る時には取るものと一般的に考えられていますが、取るべき躾糸と取らなくて良い躾糸があると言われています。

取らなくて良いと言われている躾糸はいわゆる「縫い躾(ぬいびつけ)」(「ぐしびつけ」とも言います)です。細かく点々点々と白く並んでいるアレです。綺麗にかけられた縫い躾は大変美しいです。綺麗に縫い躾をかけられる職人は腕が良いなんて言われることもあります。

ただ、昔の和裁の著名な先生で、たとえ美しい縫い躾でも躾は躾なのだから人前では取るべきだとおっしゃっていた方もいます。また、細かい縫い躾は生地を痛めることがあり将来の縫い直しの時にキズになるのですべきでないとおっしゃる方もいます。
私は、必要最小限の縫い躾を心がけています。必要なければかけないようにしています。

ちなみに長襦袢など下に着る物の躾糸は取らなくて良いという地方もあるようです。
つまり躾糸を取るか取らないかは時代や地方などで考え方が異なるので、これが正解という明確な答えはありません。

縫い代(ぬいしろ)の役割

着物の脇の縫い代(ぬいしろ)

着物は反物の耳までの余分の縫い代は裁ち落とさず、縫い込むのが一般的です。

縫い代の役割は第1に、仕立て直しができるようにすることです。
縫い代を縫い込んでおくことで、各部分を入れ替えたりすることが可能になります。

縫い代の第2の役割は、縫代を縫い込むことで着物に張りを持たせて型崩れを防いだり、芯のような役割を果たすことです。
このため、もし洋服生地で着物を作る場合も縫い代をギリギリで切り落とさずに、必要な場所には十分な縫い代を縫い込んだ方が良いです。

縫い代、縫い込みをいかに上手に始末するかは和裁の腕の見せどころでもあります。
布地に適した縫代の始末ができる様に、これからも研究していきたいと思います。